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クロスレビュー:011

「奇才」「子供がそのまま大人になっちゃった人」ジョアン・ドナートをどう表現すればいいのかと考えてみるが、「そーとー変な人間だよな。」と自分を納得させてしまう。変人なのに彼のメロディーは限りなく美しく、歌は下手くそなのに愛情を注ぎ込みたくなってしまう。インストのアルバムもいいけど、個人的にはあの歌が聴きたくなってしまう。隠居から目覚めさせるきっかけを与えた、小野リサの「ミンヤ・サウダーヂ」や「コイザス・タオゥン・シンプリス」も合せて聴いておきたい。
ドナートが自分で歌う羽目になったいきさつは、日本盤ライナーノーツに書いてあるけれど、さすがの奇人も当初は弱気だったみたい。それで顔隠しちゃったの?旦那芸と言ってしまえばそれまでだし、「アテ・ケン・サービ」あたりはさすがにつらい気もする。でもこれって、あの雰囲気だよね、ニック・デカロの「イタリアン・グラフィティー」。
ギター王国ブラジルで、鍵盤派のMPBミュージシャンは少数派だが類まれな才人が揃っている。ワルター・ワンダレイ、マルコス・ヴァリ(この人は両刀使いだ)、セルジオ・メンデス、ジョアン・ドナート。作曲家、アレンジャーとして超一流の仕事をするも、ドナートがソングブックで自ら弾くピアノの美しさに、彼の原点は、やっぱりピアノだと思う。「ケン・エ・ケン」は73年、米から戻ってきて作ったアルバムで、彼の自由自在な感性が、ブラジルの水を得て自由に泳ぎ回っているような、きらきらする作品だ。15歳で初録音を行った天才は今年66歳。まだまだいけるぞ。