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TEXT BY WILLIE WHOPPER

FAR OUT FARO 034CD
待ってました!1年半振りとなったジョイスの新作の登場です!前作は「エリス・レジーナに捧ぐ」というコンセプトのもとエリスのレパートリーに挑戦したジョイスでしたが、作品の完成度は正直いって今一歩でした。いや悪いって訳じゃなくて、どうしても無意識の内にエリスのヴァージョンと比較してしまうんですよね。コンセプト的には良かったんですが、もうちょっと煮詰めて欲しかったというのが本音。
さて本作は、70年代後半から80年代初頭のイキの良かった頃を思わせる正しくタイトル通りのエッヂの利いた「Hard Bossa」です。バッキングを務めるの面々は、夫であり、長年のコンビを組んでいるドラマーのトゥッティ・モレーノを筆頭に、ギンガの新作でも印象的なプレイを披露、今夏イヴァン・リンスと来日したルーラ・ガルヴァオン、その他ブラジル・フュージョン界のトップ奏者カルロス・マルタとマリオ・アドネ、そしてなんと大御所、詩人のパウロ・セザール・ピニェイロも参加してます。
エレンコ風のジャケット・ワークも秀悦。これは恐らくバーデン・パウエルの「ヴォンターヂ」が元ネタなのでしょうか?かなり意識してますね。アナログ盤も出ていますので、こっち買ってインテリアとして飾るのもイケます(2曲少ないのが残念なのですが)。
音的には特に新しい事にチャレンジしている訳でも無く、一聴しただけだと「マンネリだよ。」と言う人がいてもおかしくなさそうなんですが、いやいやこの作品には勢いがあります!私も実はこの4~5年に出た作品群を聴いていると「ジョイスの全盛期は過ぎ去った」なんて言いたくなりそうになっていたのですが、この作品聴いてその台詞は撤回しなければならなくなりました。まだまだいけます。
実はこの作品の勝利には一人のイギリス人の存在があるのです。ここまで素晴らしい作品が出来たのも決してジョイス一人の技量では無く、彼女の一番良い部分を上手く抽出する事に成功したプロデューサが居たからこそ。今回全面的に制作に参加しているジョー・デイビスの功績ですね。彼については御存知ない方も多いとは思いますが、このファー・アウト・レーベルのオーナーであり、レコード店のディーラー、更にはクラブDJもこなす相当のブラジル音楽ヲタクです。(なんでもこの10年間に30回以上も渡伯したとか。)
多くのブラジル人リスナーが見過ごしているブラジル音楽の魅力の一断片に着眼し、アーティスト自身も見過ごしてしまっている秘めた個性を引き出してあげ、それまでの作品群を上回る更に素晴らしい作品として世に出す。イギリス人である彼の参加が無ければジョイスもこの地点まで到達出来なかったのでは無いでしょうか?
現在、イギリスには彼をはじめ大勢の音楽関係者がブラジル音楽に注目しています。いやイギリスだけでなくイタリア、フランス、そして日本も同様です。ブラジル音楽は正しく全世界に羽ばたいています。私達ももっとシーンを盛り上げていきましょう!