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text by 《DINO》

アブリル・レーベルのアーチストを集めて作られた、イパネマの娘カバー集。10曲続けて同じ曲を聴かされるわけだ。こういった企画のアルバムとしては、ジャズの「ラウンド・ミッドナイト」やタンゴの「ラ・クンパルシータ」のものがあるけど、どれも別々に作られたものを集めたもので、今回のように初めから1枚のアルバムとして企画されたものじゃなかった。まぁ、誰でも思いつきそうなものではあるけれど、実際に商品化するとなるとねぇ。
ここでは、ビッグネームはイヴァン・リンスくらいで、後は若手のロックやラップ、アシェー系のミュージシャンを起用している。ルミアールのソングブックシリーズを聴いていても感じることだけれど、大物ラインアップが必ずしもよい結果を生むわけではない。ましてや、全部同じ曲となればかなり音楽性の違うメンツを揃えなければ、退屈なものになるのは目に見えている。その点では、今回はおおむね成功していると思う。実際はムンド・リヴリS/Aやイラ!の名前を見て、もっと大暴れしてくれるのを期待してたんだけど、ちょっと期待はずれかな。アシェー系の連中も元気はいいけど、まぁ、まっとうなアプローチだし、ラップ勢も予想できる範囲かなとは思う。それよりも、今回聴いていて感じたのは、この曲のメロディーの強靱さというか。どうねじ伏せてもイパネマはイパネマ。アレンジやあてがわれたリズムじゃなくて、メロディーそのものがグルーブ感や色彩感を全て持っている。そんなわけで、あのメロディーが出てきた瞬間、アレンジがどうだろうと一気に海岸沿いの通りを歩くモレーナが目の前に立ち現れる。おそるべしジョビン。
この曲のカバーで最もユニークなものといえば、フリージャズミュージシャンだった頃のアーチー・シェップのものだろうけど、このくらい無茶やってようやく違う様相を見せ始めるくらいで、その上行くのは、デヴィッド・モスのヴァージョンか。まぁ、この場合はぶっこわれちゃってますけど。